自分へのご褒美

「うー、おいしい! やっぱりライくんとフェアちゃんの作ったプリンは最高だよー!」

 スプーンに乗せたプリンがふるふると揺れる。

 楽しくてまた揺らす。
 口に運ぶ。
 揺れる。
 食べた。

「このやわらかさも丁度良いし」

 一口スプーンに乗せる。
 揺れる。
 運ぶ。
 揺れる。
 食べた。

「お主はほんとにプリンが好きなようだな。昨日も食べていただろう」
「あ、セイロン。お帰りなさい」

 が笑った。
 それはセイロンが帰って来たことに関してなのか、プリンを食べて幸せだからなのかは分からない。

「ただいま、殿」

 セイロンが向かいの椅子に座った。
 が立ち上がって、奥の厨房からプリンとスプーンを持ってくる。

「どうぞ」
「ありがとう」

 が椅子に座り、再びプリンを食べ始める。
 揺れるプリン。
 運んで揺らして、揺らして食べる。

「店主殿は?」
「ライくんもフェアちゃんも食材取りに行っちゃった。皆もそれについていったよ」
殿は何か用事でもあったのか?」

 きょとんとは見てから、少し慌てた。

「え、だって誰かはお店に残ってないと駄目じゃない? で、このプリンはおやつ」
「ではおやつの時間を邪魔してしまったかな」

 セイロンもプリンを口に運ぶ。揺れるプリン。
 がそれをじっと見ていた。
 目があってはじめて気が付いた。
 はセイロンがプリンを食べているところをずっと見てしまっていた。
 急に恥ずかしくなったらしく慌てて視線をそらしたことをセイロンは知っている。

「そんなことない、一人で食べるより誰かと食べた方がおいしいよ」
「そうか」

 慌てたようにいうの様子に、セイロンは思わず笑ってしまった。

「……あとね」
「ん?」

 一口分。
 スプーンに乗せたところで、の声が聞こえたからセイロンは手を止めた。
 顔を赤くしながら少し俯いた。

「セイロンのこと、待ってたかったから」

 それが何の答えなのか、セイロンは直ぐに気が付いた。

「そうか」

 セイロンがふわりと笑った。
 その笑みを見れただけでも、お店に残ってて良かったとは思った。

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書(07/06/03) 上(07/06/10)
それは自分へのご褒美 一緒に食べれて嬉しいな 笑ってくれて嬉しいな
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