頭を抱えて座り込んだ。
「信じられない」
何なんだ、あの人。
『その天下餅、左近がついて』
かっこよすぎる。
『殿に差し上げることにしましょう』
何であんなにかっこいいんだろうか。
殿が望むのなら、部下である私はその望みを全力で叶えるのだが。
今回は本気でその願いが叶えられるのかと心配したのだが。
「ん、? どうした」
「あんたかっこよすぎるんだよ」
この人が言うなら、大丈夫だ。
「あたし小早川と毛利の間あたりにいるからさ、中央で暴れてきなさいな」
左近の背中を軽く叩いた。
バシリと良い音がする。
また、軽く叩く。
「ああ、わかった」
「あ、大谷さんに小早川行ったらお願いしますって伝えといてくれると嬉しい」
「わかった、わかったから」
「なによ、そのやる気のなさ」
「もう叩くのはやめないか」
左近に両手を掴まれた。
ああ、もう。
「いやだ。あたしも殿に会いたかったのに! あんな台詞言われた後で、会いに行けるわけないじゃない」
「そんな気にすることじゃないだろ」
「気にするよ。だって殿を安心させられるのはあんたじゃないとだめだし、あんたはかっこいいんだもん」
「へえ?」
「と、とりあえず、天下餅の半分! とはいかないけど、少しくらいあたしにも手伝わせなさいね」
「もちろんだ。期待してるぜ、」
「あ、こら。名前呼ぶなよ」
この戦、何が何でも勝たなくては。
(『おめでとう』がいいかなあ。『ただいま』とかのがいいかなあ)
(なにがです?)
(この戦終わって、殿に会った時に言いたい言葉。やっぱり『おめでとうございます』かなあ?)