嘘吐いたら

 鬱陶しい。
 何なんだよほんとにこいつは。
 こいつから見たら私なんてそこら辺に居る小娘と同じだろうし、声かけたって楽しくないだろう。
 自分とこいつとでは、いくつ歳が離れているのかわかっているのだろうか。
 そういえば、こいつ今いくつなんだ?

「溜息を吐くと幸せが逃げるって知ってます?」

 ああ、まだ隣にいたのか。とは辛うじて言わなかった。

「あー……、ここに来てから幸せは無い物だと思ってますから。変わりませんよ」

 『だってあんたがいるし』とも『呂蒙殿が居ないし』とも言わない。
 こんなよくわからない世界で幸せになれる方が可笑しいんだ。

「そしたら俺の幸せもなくなっちまう」

 その返答が意外にも、思っていたのより弱気だったので驚いた。
 何もかもがそこら辺の知らない者よりも、強いものだろうと思っていたからだ。
 そんなやつでも弱気になるのか、と思ったからだろうか。

「へえ、俺が幸せにしてやるぐらい言うのかと思ってました……って、あ」

 何故か思った言葉を口にしていた。
 慌てて無かったことにしようとしても遅い。
 左近が驚いた顔をしている。

「そりゃあすいません。そういったお言葉をお望みでしたか」

 違うとばかりに睨んだが、さっきと違ってニヤニヤとしている。
 ああいやだ。
 いい歳をして、どうしてあんたはこんなところにいるんですか。
 いや、私だってこんなおっさんをかまってるのがわるいのか、と気が付いた。

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書(07/07/01) 上(07/07/04)
お題配布サイトさま『リライト』さまの長文題より「いい歳をしてどうしてこんなことを、と、思わなくも…ない」
 これはもうくっついてるんです……か? (きかないでー!) というか本当にいくつ?
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