鬱陶しい。
何なんだよほんとにこいつは。
こいつから見たら私なんてそこら辺に居る小娘と同じだろうし、声かけたって楽しくないだろう。
自分とこいつとでは、いくつ歳が離れているのかわかっているのだろうか。
そういえば、こいつ今いくつなんだ?
「溜息を吐くと幸せが逃げるって知ってます?」
ああ、まだ隣にいたのか。とは辛うじて言わなかった。
「あー……、ここに来てから幸せは無い物だと思ってますから。変わりませんよ」
『だってあんたがいるし』とも『呂蒙殿が居ないし』とも言わない。
こんなよくわからない世界で幸せになれる方が可笑しいんだ。
「そしたら俺の幸せもなくなっちまう」
その返答が意外にも、思っていたのより弱気だったので驚いた。
何もかもがそこら辺の知らない者よりも、強いものだろうと思っていたからだ。
そんなやつでも弱気になるのか、と思ったからだろうか。
「へえ、俺が幸せにしてやるぐらい言うのかと思ってました……って、あ」
何故か思った言葉を口にしていた。
慌てて無かったことにしようとしても遅い。
左近が驚いた顔をしている。
「そりゃあすいません。そういったお言葉をお望みでしたか」
違うとばかりに睨んだが、さっきと違ってニヤニヤとしている。
ああいやだ。
いい歳をして、どうしてあんたはこんなところにいるんですか。
いや、私だってこんなおっさんをかまってるのがわるいのか、と気が付いた。